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2025/05/15 17:09:00

FX両建てとは?その本質と戦略的活用を解説

この記事は最後に更新されました 2025/08/13 16:49:32

FX両建てとは?その本質と戦略的活用を解説

FXで、相場の急変動に直面したトレーダーが選択肢の一つとして考えるのが「両建て」です。これは、同一通貨ペアに対して買いポジションと売りポジションを同時に保有することを指します。一見するとリスクを相殺できる便利な手法に見えますが、両建てとはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?特に、損失が拡大した際に損切りを回避する目的で安易に両建てを利用することは、かえって大きなリスクを招く可能性があります。

この記事では、両建ての基本的な仕組みから、その戦略的な活用法、そして特に注意すべきデメリットとリスクまで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。

両建てとは?買いと売りを同時に保有する戦略

両建てとは、FX取引において、同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションを同時に保有することを指します。

例えば、米ドル/円(USD/JPY)を例にとると、

  • 「米ドル/円の買いポジション」を1ロット(1万通貨)保有
  • 同時に「米ドル/円の売りポジション」を1ロット(1万通貨)保有

このような状態が両建てです。両建ての状態では、為替レートがどれだけ変動しても、買いと売りの損益が相殺されるため、新たな為替差損益は発生しません

両建ての基本的な考え方

両建ての根底にあるのは、為替レートの変動リスクを一時的に固定するという考え方です。相場がどちらに動いても、買いポジションと売りポジションの損益が互いに打ち消し合うため、含み損益の変動が止まります。この特性から、特定の戦略や状況下で利用されることがあります。

ただし、FX業者によっては両建てを推奨していない、あるいは一部制限がある場合もあります。取引を始める前に、ご自身の利用しているFX業者のルールを確認することが重要です。

両建てのメリット:なぜ両建てを行うのか?

両建ては、使い方によっては特定のメリットをもたらすことがあります。

1. 含み損の一時的な固定(損切り回避とは異なる)

最もよく言われるのが、含み損の拡大を一時的に固定できる点です。例えば、買いポジションで含み損が発生し、さらに相場が下落しそうな時に両建てを行うと、それ以上損失が拡大するのを止めることができます。これにより、精神的なプレッシャーを軽減し、冷静に今後の戦略を立てる時間稼ぎができると考えるトレーダーもいます。

ただし、これはあくまで「固定」であり、損失が解消されたわけではありません。安易に損切りを回避する目的で両建てを行うと、後述するデメリットが顕在化する可能性があります。

関連記事:損切りと利確タイミングの基本|初心者向けトレード入門🔗

2. 相場分析の時間稼ぎ

相場が複雑な動きを見せ、次の方向性が読みにくい時に両建てを行うことで、為替変動の影響を受けずに、じっくりと相場分析を行う時間を確保できることがあります。特に、重要な経済指標発表前など、ボラティリティが高まる可能性がある場面で一時的に利用されることもあります。

3. スワップポイントの狙い(限られたケース)

非常に限定的なケースですが、特定の通貨ペアにおいて、買いと売りのスワップポイントの合計がプラスになる場合、両建てでスワップポイントの受け取りのみを狙う戦略もあります。しかし、これは非常に稀であり、スプレッドや金利変動リスクを考慮すると現実的ではない場合がほとんどです。むしろ後述するスワップポイントの支払いにより、デメリットになることの方が多いです。

関連記事:FXにおけるスワップポイントとは?その仕組みと活用法を詳しく解説🔗

両建てのデメリットと潜むリスク:損切り回避の危険性

両建てには、メリットをはるかに上回る多くのデメリットとリスクが潜んでいます。特に、損切りを回避する安易な手段として利用することは、非常に危険です。

1. スワップポイントの支払いが増える(大きなコスト)

両建ては、買いと売りの両方のポジションを保有するため、それぞれのポジションに対してスワップポイントが発生します。ほとんどの通貨ペアでは、買いスワップはプラス、売りスワップはマイナスとなるため、両建てをすると、プラスのスワップポイントとマイナスのスワップポイントの両方を抱えることになります。多くの場合、合計するとマイナスとなり、日々コストが膨らんでいくことになります。

例: ドル/円の買いスワップが+50円、売りスワップが-70円の場合

両建てで1ロットずつ保有すると、1日あたり -20円(50円 – 70円)のコストが毎日発生します。

これが1ヶ月続けば、-600円(-20円 × 30日)となり、為替差益が動かなくても損失が膨らみます

このスワップポイントの支払い増加は、両建てを長く続けるほど累積し、無視できないコストとなります。

関連記事:FX取引コストの基本:スプレッド・手数料・スワップポイントの仕組み🔗

2. 必要証拠金が増える(資金効率の悪化)

多くのFX業者では、両建ての場合でも買いと売りの両方のポジションに対して証拠金が必要になります(一部、買いと売りの片方分だけで済む業者もありますが、非常に稀です)。そのため、通常の片側だけのポジションを持つ場合に比べて、必要証拠金が2倍近くになり、資金効率が著しく悪化します。

資金効率の悪化は、ロスカットのリスクを高めることにも繋がりかねません。

関連記事:初心者でも分かる!FXにおける必要証拠金とは?計算方法と注意点を詳しく解説🔗

3. 判断が複雑になり、身動きが取れなくなる

両建ては、買いと売り、二つのポジションの管理が必要になるため、通常の取引よりも判断が複雑になります。「どこで片方のポジションを決済し、どこで残りのポジションを決済するか」という判断は非常に難しく、初心者には特に高いスキルが求められます。

多くの場合、ずるずると両建ての状態を維持してしまい、最終的に身動きが取れなくなり、塩漬け状態になるに陥りがちです。

4. 損切りの判断が遅れる(最も危険な落とし穴)

両建てが最も危険なのは、含み損が出た際に「損切りしたくない」という心理から、安易に両建てを利用してしまうことです。一時的に含み損の拡大は止まりますが、これは損失を確定していないだけであり、解決にはなりません。

むしろ、スワップポイントの支払いという新たなコストが日々発生するため、時間経過とともに損失が確実に膨らんでいきます。さらに、両建てを解消するタイミングを誤ると、片方の決済で大きな損失が確定し、残りのポジションも不利な状況に陥り、最終的にはより大きな損失を抱え込むことになります。

損切りは、損失を限定し、資金を守るための重要なリスク管理手法です。両建ては、損切りの判断を遅らせ、損失をより深刻化させる落とし穴になり得ることを深く認識すべきです。

両建てを避けるべき理由と代替策

前述の通り、両建ては多くのデメリットとリスクを伴うため、FX初心者だけでなく、経験豊富なトレーダーにとっても推奨される手法ではありません。特に損切りの代わりとして使うのは絶対に避けるべきです。

両建てを避けるべき主な理由

  • 無駄なコスト(スワップポイント)の発生
  • 資金効率の悪化
  • 判断の複雑化による操作ミスの誘発
  • ロスカットリスクの増大
  • 損切り判断の遅れによる損失の拡大

両建ての代替策

損失が拡大した場合や相場が読めない場合には、両建てではなく、以下の代替策を検討しましょう。

  1. 速やかな損切り: 予め決めておいた損切りラインに達したら、迷わずポジションを決済し、損失を限定することが最も重要です。これは、資金を守るための鉄則です。
  2. ポジションサイズの調整: 相場の不確実性が高い場合や、資金に余裕がない場合は、保有しているポジションの量を減らすことで、リスクを管理できます。
  3. 取引を一時中断する: 相場が読めない時や、感情的になっている時は、無理に取引を続けるのではなく、一度ポジションを全て決済し、冷静になるまで市場から離れることも重要です。
  4. 相場分析に専念する: ポジションを抱えたまま混乱するよりも、一旦手仕舞い、落ち着いてテクニカル分析ファンダメンタルズ分析に時間を費やしましょう。

まとめ

両建てとは、FX取引で同一通貨ペアの買いと売りポジションを同時に保有する戦略です。一時的な含み損の固定というメリットがあるように見えますが、その裏にはスワップポイントの支払い増加、資金効率の悪化、判断の複雑化といった多くのデメリットが潜んでいます。

特に、損切りを回避するために安易に両建てを利用することは、損失を確定せずにコストだけを増やし、最終的にさらなる大きな損失を招く非常に危険な行為です。

FX取引において最も重要なのは、適切なリスク管理と規律ある損切りです。両建てのリスクを十分に理解し、安易な選択に走ることなく、冷静かつ計画的な取引を心がけましょう。

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よくあるご質問

Q1. 両建ては違法ではないのですか?

A1. いいえ、両建てはFX取引において違法な行為ではありません。多くのFX業者で両建ては可能とされています。ただし、一部のFX業者では、両建てによって意図的にスワップポイントを不正に獲得しようとする行為や、システムを悪用する行為を禁止している場合があります。また、両建てに関する証拠金計算のルールは業者によって異なるため、利用する前に必ずFX業者の規約を確認することが重要です。

Q2. スワップポイントがプラスになる両建ては本当に可能ですか?

A2. 理論的には不可能ではありませんが、極めて限定的な状況に限られます。例えば、買いポジションのスワップポイントが非常に大きくプラスで、売りポジションのマイナススワップを上回る場合などです。しかし、そのような状況は一時的であり、スプレッドコストや金利変動のリスクを考慮すると、安定的な利益を継続的に得ることは非常に難しいのが現状です。ほとんどの場合、両建てはトータルでマイナススワップとなり、コストが発生します。

Q3. 両建てはどんなトレーダーにおすすめですか?

A3. 基本的に、FX初心者は両建てを避けるべきです。その複雑性とリスクを考慮すると、非常に高度な知識と経験、そして明確な戦略を持つトレーダー以外には推奨されません。両建てを検討する前に、まず単一ポジションでのリスク管理と損切りの徹底をマスターすることが、FXで成功するための第一歩となります。

【免責事項】
本記事は、あくまで一般的な情報提供を目的としており、投資助言や推奨を行うものではありません。FX取引には、レバレッジ取引の特性などにより預託証拠金を上回る損失が発生する可能性があり、元本割れのリスクを伴います。投資の際は、ご自身の投資目的・財務状況・リスクを十分にご考慮のうえ、慎重に判断をお願いします。Cashback Islandは、本記事の内容に基づき行われた取引結果について、一切責任を負い兼ねます。

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