米国4月の小売売上高が伸び鈍化、関税政策で個人消費に影響
米4月小売売上高の発表
米商務省が2025年5月15日に発表した4月の米国小売売上高(季節調整済み)は、前月比でわずか0.1%の増加にとどまった。これは、関税政策を背景に消費者の購買意欲が鈍ってきていることを示唆している。
前月の3月は1.7%の増加と、当初の1.5%増から上方修正されたものの、4月はその反動で伸びが大幅に鈍化した。自動車購入の前倒し需要が一巡したことも影響しており、関税発表前に見られた特需の効果が薄れていると見られる。また、家計が先行きの不透明な経済見通しを警戒して支出を抑制していることも要因の一つだ。
コア売上高はマイナスに転落
小売売上高から自動車、ガソリン、建築資材、食品サービスを除いた「コア売上高(コントロールグループ)」は前月比で0.2%減少となった。エコノミストの予想(0.3%増)を下回った。特に、スポーツ用品、趣味用品、楽器、その他の小売業種においては、2%台の減少が見られた。
また、飲食サービスは1.2%の増加となったが、前月の3.0%増からは減速している。
高額商品の買い控え、景気減速懸念も
エコノミストの間では、関税の影響が支出減少という形で現れているとの見方が強まっている。RSM・USのトゥアン・グエン氏は、「米中の追加関税引き下げにより、向こう12カ月間の景気後退は基本シナリオではなくなったが、米経済が今後数四半期にわたり成長低迷に陥る可能性は高まっている」と指摘した。高額商品の在庫積み増しが一部で見られたものの、家具、家電、スポーツ用品などで売り上げの落ち込みが顕在化している。
統計へのゆがみ懸念も
関税に伴う価格上昇が小売統計に与える影響についても懸念がある。小売売上高はインフレ調整されないため、数字の増加が必ずしも実質的な販売活動の活発化を示しているわけではなく、単に物価の上昇分を反映している可能性があるという点だ。
加えて、GDPの算出に影響するコア売上高(飲食店、自動車ディーラー、建設資材、ガソリンスタンドを除いた統計)は0.8%の減少と、2023年3月以来の大幅なマイナスを記録している。
今後の見通し
今後小売売上高は関税政策やインフレの影響を受けやすく、消費の先行きには不透明感が残る。特に高額商品の需要は前倒しの反動で弱含む可能性がある。一方で、米中の追加関税引き下げ合意が下支え要因となり、短期的な景気後退リスクはやや後退した。今後発表されるPCEなどの指標が消費の回復傾向を示すかが注目される。
よくある質問
Q1.米国小売売上高とは?
A1.米国小売売上高とは、国内における小売業やサービス業の売上を集計した経済指標であり、アメリカの個人消費の動向を把握する上で重要な役割を果たしている。米国経済では個人消費がGDPの約70%を占めており、これは他の先進国と比べても高い比率だ。そのため、消費の増減が景気全体に与える影響は大きく、この指標は金融市場や政策判断においても注目されている。
Q2.米国小売売上高の発表時間は?
A2.米国小売売上高は、基本的に対象となる月の翌月第2週ごろに発表される。具体的な発表時間は以下のとおりである:
- <夏時間> 日本時間 21:30
- <冬時間> 日本時間 22:30
Q3.2025年の米国小売売上高はどのように推移しているのか?
月 | 前月比 | 自動車除くコア・前月比 | ||
結果 |
前回改定値 |
結果 | 前回改定値 | |
2025年1月 | -0.9% | 0.7% | -0.4% | 0.7% |
2025年2月 | 0.2% | -1.2% | 0.3% | -0.6% |
2025年3月 | 1.4% | — | 0.5% | 0.7 |
2025年4月 | 0.1% | 1.7% | 0.1% | 0.8% |
2025年5月 | -0.9% | -0.1% | -0.3% | 0.0% |
※MINKABUによるデータ(2025年6月17日)