5月の米総合PMIが52.1に上昇、関税転嫁で価格指数は22年11月以来の高水準
5月の米購買担当者景気指数速報
米S&Pグローバルが2025年5月23日に公表した5月の米国購買担当者景気指数(PMI)速報値は、総合で52.1と、前月の50.6から改善した。拡張と縮小の境目とされる50を上回り、景気の拡大が続いていることを示した。
製造業・サービス業ともに回復基調
製造業PMIは52.3と、ロイター調査による市場予想の50.1を上回った。また、サービス業PMIも52.3となり、前月の50.8から上昇した。予想では横ばいが見込まれていたが、こちらも堅調な結果となった。
今回の回復は、主に米中貿易戦争の一時的な休戦が市場心理を支えたことが背景とされる。特に製造業においては新規受注の回復が顕著で、新規受注指数は52.4と上昇し、需要の持ち直しが窺える。
価格指数が急上昇、インフレ懸念再燃
今回のデータで最も注目すべき点は、価格指数の急騰だ。投入価格指数は前月の58.5から63.4へと4.9ポイント上昇し、2022年11月以来の高水準を記録した。商品・サービスの販売価格指数も54.0から59.3へと5.3ポイント上昇し、こちらは2022年8月以来の高さとなっている。
この急激な価格上昇の背景には、トランプ政権による広範な関税政策がある。企業は商品や原材料にかかる輸入関税の増加分を価格に転嫁しており、総合PMIの販売価格指数は3カ月連続で上昇している。
雇用は弱含み、企業の慎重姿勢も浮き彫りに
一方で、雇用指数は49.5と、前月の50.2から分水嶺の50を下回る結果となり、企業の採用意欲がやや鈍化していることが示唆された。これは、不確実な経済環境やコスト上昇への懸念が影響している可能性がある。
在庫積み増しが顕著 供給懸念が企業行動に影響
供給不足への懸念から、多くの生産者が在庫の積み増しに動いている。実際、製造業の在庫指数は、2007年の統計開始以来の最高水準を記録しており、企業が供給不足を懸念して在庫積み増しに動いている様子がうかがえる。
ウィリアムソン氏は「5月の回復は、少なくとも部分的に、企業やその顧客が関税関連のリスクに備えて前倒しで行動していることに起因する」と分析した。特に7月に90日間の猶予期間が終了した後、関税がさらに引き上げられる可能性を警戒した動きが顕著だという。
今回の見通し
今回の5月PMI速報値は、米国経済に一定の安定化傾向が見られる一方で、関税や原材料コストの上昇を背景とした物価上昇リスクが浮き彫りとなった。とりわけ、販売価格や投入価格の急激な上昇は、今後のインフレ再燃を警戒させる内容であり、FRBの金融政策判断にも影響を与える可能性がある。
今後も関税政策の動向と物価動向に注目が集まる中、企業の景況感と実体経済の乖離に対しても慎重な分析が求められる。
よくある質問
Q1.購買担当者景気指数(PMI)とは?
A1.購買担当者景気指数(PMI)とは、企業の購買担当者を対象に実施される景気動向調査の結果を基に算出される指標だ。主に製造業とサービス業の経済活動を測定し、景気の先行指標として活用される。
PMIの結果が市場予想を上回ると、景気の拡大が期待され株価や通貨(特にドルなど)が上昇しやすい。一方、予想を下回ると景気減速懸念から売り圧力がかかることが多い。
Q2.なぜ製造業とサービス業のPMIが別々に発表されるのか?
A2.製造業とサービス業では経済への影響や動向が異なるため、別々に集計される。
製造業PMIは工場の稼働や輸出入の動向を反映し、サービス業PMIは国内の消費や雇用に敏感だ。両方を見ることで経済全体のバランスを把握できる。
Q3.今回の米PMIの発表が外国為替市場に与える影響は?
A3.S&Pグローバルが午前に発表した月の米PMI速報値が市場予想を上回ったことを受けて、為替市場ではドルの買い戻しが進行した。ドル円は再び143円台後半まで上昇している。