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2025/06/13 18:36:05

米CPI前年比2.4%上昇、全体のインフレ圧力は緩和傾向

この記事は最後に更新されました 2025/06/13 18:37:39

米CPI前年比2.4%上昇、全体のインフレ圧力は緩和傾向

5月の米CPI発表、前年同月比で2.4%上昇

米労働省(BLS)が2025年6月11日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)は、前年比2.4%上昇を示した。この伸び率は4月の2.3%からわずかに加速したものの、市場予想(2.5%)を下回る結果となった。特に注目されるのは、ガソリン価格の低下が家賃上昇分を相殺したことで、全体のインフレ圧力が緩和された点である。

月次ベースで見ると、5月のCPIは前月比0.1%上昇と、4月の0.2%上昇から減速した。こちらもエコノミスト予想(0.2%上昇)を下回る数値であった。

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コアCPIは前年同月比2.8%上昇、インフレの広がりには一服感

食品とエネルギーという変動の大きい項目を除いたコアCPIは、前月比0.1%前年比2.8%上昇した。市場予想(それぞれ0.3%、2.9%上昇)と比較すると、特に月次ベースで予想を大きく下回る結果となった。4月の数値(0.2%、2.8%)と比較しても、基調的な物価上昇圧力が抑制されていることが読み取れる。

サービス価格は上昇継続、財価格は横ばい

価格の内訳を見ると、サービス価格は前月比で0.2%上昇し、4月の0.4%上昇からは減速した。一方で、財(モノ)価格は横ばいとなり、前月の0.1%上昇と比較してもインフレ圧力は限定的であった。

食品は上昇、ガソリンと航空運賃は下落

個別の品目では、食品価格が前月比0.3%上昇した。シリアルやパンなどの家庭用食品の価格が特に上昇した。果物や野菜も上昇に寄与した一方、卵は2.7%下落、肉類や乳製品も値下がりした。

ガソリン価格は2.6%の下落となった。輸送関連では、航空運賃が2.7%、中古車・トラックが0.5%、新車が0.3%それぞれ下落した。衣料品も0.4%下落し、需要の伸び悩みが価格に反映された形となった。

一方、住居費は0.3%上昇し、帰属家賃(持ち家を賃貸と仮定した家賃)も同様に0.3%上昇した。医療費は0.3%、処方薬は0.6%上昇し、自動車保険も0.7%の上昇を記録した。

関税の影響は徐々に顕在化、大型家電や玩具の価格が上昇

一部の品目では、関税の影響とみられる価格上昇が確認された。大型家電は4.3%の大幅上昇を記録し、これは2020年8月以来の高水準である。鉄鋼やアルミニウムに対する追加関税が価格に反映されたと考えられている。玩具も1.3%上昇し、2023年2月以来の上昇率となった。

関税措置による影響は今後本格化の可能性、企業はコスト転嫁に慎重姿勢

現在、企業は関税発動前に積み上げた在庫を活用することで、消費者への価格転嫁を回避している。しかし、関税が今後さらに引き上げられた場合、企業がコストを価格に反映せざるを得なくなる可能性が高い。

フィッチ・レーティングスのチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン氏は「企業による在庫積み増しが価格転嫁のタイミングを後ろ倒しにしているが、今後数カ月でコア財価格が上昇する可能性は依然として高い」と警告した。

小売業界では、ウォルマートやターゲットなどが今後の価格上昇を警告しており、自動車メーカー(フォード・モーター、スバルなど)も同様の懸念を示している。FRBが公表したベージュブックによれば、物価は現状「緩やか」な上昇ペースだが、一部地区では「強くて大幅」な上昇を予測する声もある。

利下げへの期待も、FOMCは慎重姿勢を崩さず

FOMCは来週の会合で政策金利を据え置くと予想されている。現状では価格転嫁が限定的で労働市場が安定していること、さらに政策不確実性が持続していることがその背景にある。ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、マイケル・パグリース氏は「金融当局にとっては判断時期が少し早すぎる」とし、「単月の統計に過度に反応することはないだろう」と述べている。

一方、コロナ禍後のインフレ影響が持続する中、消費者の許容限度を超えれば支出抑制に繋がるリスクもある。食品大手JMスマッカーや家電量販ベスト・バイなどは、既に利益圧迫を指摘しており、経済減速を懸念する声も少なくない。

今後の見通し

今後の物価動向は米中通商交渉の進展に大きく依存する。米中代表団がロンドンで行った協議では貿易摩擦緩和に向けた暫定合意が成立しており、これが既に消費者のインフレ期待を低下させている。

金融当局は賃金動向にも注視している。5月の実質平均時給は前年比1.4%上昇しており、個人消費の主要けん引役としての健全性が確認された。今後の賃金・物価のバランスが、消費動向ひいては経済全体の方向性を決定づける重要な要素となるだろう。

よくある質問

Q1.消費者物価指数(CPI)とは?

A1.消費者物価指数(CPI)は、特定の期間における消費者が購入する商品やサービスの価格の変動を示す指標である。また、CPIは政府や中央銀行が経済政策を決定する際に重要なデータとなり、国民の生活費の変動を反映している。

CPIには、次のような2つの主要な種類がある:

  • 総合CPI:食品やエネルギーを含むすべての商品やサービスの価格を含む。
  • コアCPI:食品やエネルギーなど価格が変動しやすい項目を除いたものだ。経済の基調的な物価動向を把握するために使用される。

Q2.通常のCPIとコアCPIの違いは?

A2.通常のCPIは、すべての消費財・サービス(食料品、エネルギー、住宅、医療など)を含み、総合的な物価動向を反映する。一方、コアCPIは価格変動が激しい「食品」と「エネルギー」を除外した指数で、基調的なインフレ傾向を測るために使われる。

エネルギー価格は天候や地政学的リスクで変動しやすく、食品も季節的要因の影響を受けやすいため、コアCPIはより「長期的な物価動向」を分析する際に重視される。

Q3.今回のCPIデータで、なぜ関税の影響がまだ限定的だと言えるのか?

A3.今回のCPIでは、大型家電(+4.3%)や玩具(+1.3%)など、関税の直接的な影響を受ける品目で価格上昇が見られた。しかし、全体としては企業が以下の対応を取っているため、まだ消費者への影響が全面化していないと考えられる。

  • 関税発動前の在庫確保
  • 価格競争を避けるため、一時的にコストを吸収
  • 一部の関税が猶予・除外されている(特に中国からの輸入品)

ただし、今後関税がさらに強化されれば、企業が価格転嫁を進める可能性が高く、数か月後にはより明確なインフレ圧力として現れると予想されている。

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