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2025/06/10 18:21:10

アメリカ5月雇用統計:雇用拡大は鈍化も、賃金上昇が支えに

この記事は最後に更新されました 2025/08/15 18:45:39

アメリカ5月雇用統計:雇用拡大は鈍化も、賃金上昇が支えに

アメリカ5月雇用統計の発表

米労働省が2025年6月6日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の雇用者数は前月比で13万9000人の増加となり、4月からやや減速した。市場予想(13万人増)を僅かに上回ったものの、3カ月連続で低下傾向が続いている。特に注目されるのは、3月・4月の合計で9万5千人もの大幅な下方修正が行われた点で、労働市場の勢いが緩やかに減退しつつある実態が浮き彫りとなった。

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失業率と労働力参加率の動向

失業率は前月に続き3か月連続で4.2%を記録した。市場予想と一致した形だが、これは62万5000人もの人々が労働市場から離脱したことが背景にある。労働力人口の減少は、労働供給に対する新たな不安材料となっている。

賃金の堅調な伸びが示すインフレ圧力

平均時給は前月比で0.4%増、前年同月比では3.9%増となり、いずれも市場予想(それぞれ+0.3%、+3.7%)を上回った。インフレ抑制が金融政策の焦点となる中、この賃金上昇の勢いはFRBの利下げ時期判断に影響を与える可能性がある。

公共・サービス部門が堅調も、製造業は減少

業種別では、引き続き医療分野が雇用を牽引し、病院や外来サービスなどで6万2000人の雇用が増加した。レジャー・ホスピタリティー部門も4万8000人の増加を記録し、主にレストラン・バーなどの飲食関連が寄与した。社会福祉関連でも1万6000人増となり、公共性の高い部門が堅調さを見せた。

一方で、製造業は8000人の減少、連邦政府雇用は2万2000人の減少、小売業でも雇用減が確認された。全体として雇用者が増加した業種の割合は50%にとどまり、これは2024年7月以来の低水準だ。

利下げ再開に慎重姿勢、9月が焦点に

今回の雇用統計により、FRBが年内の利下げ再開を急ぐ理由はやや薄れたとの見方が広がっている。現時点では、6月下旬のFOMCでは金利据え置きが有力視され、9月の利下げ再開がメインシナリオとされている。

企業のレイオフへの慎重姿勢も注目されている。ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏は「雇用主は大きな不確実性を前に『雇用の温存』を図っている。人員削減にはコストがかかるため、企業はトランプ関税の影響を見極めるまではレイオフに慎重だと当社ではみている」と分析した。

また、トランプ政権による一部関税の停止決定により、企業や消費者のセンチメントが改善していることも、雇用市場の下支え材料とされる。ただし、移民政策の厳格化が労働供給をさらに圧迫するリスクも残る。

今後の見通し

全体として、5月のアメリカ雇用統計は、拡大基調の継続を示しながらも、そのペースに減速感が見え始めている。堅調な賃金上昇と一部業種での雇用増はポジティブ材料だが、政府部門や製造業での雇用減、修正による実質的な雇用減速など、課題も多い。

今後の金融政策の行方は、こうした複雑な労働市場の動向と、それに伴うインフレ圧力をどのように見極めるかにかかっている。

よくある質問

Q1.雇用統計とは?

A1.雇用統計とは、アメリカの労働市場の状況を示す非常に重要な経済指標のことだ。具体的には、毎月第1金曜日に米労働省の労働統計局(BLS)が発表する。市場への影響が大きく、特に為替や株式市場、金利動向に強く作用する。

主な指標:

  • 非農業部門雇用者数:農業を除く全業種の雇用者数の増減
  • 失業率:労働力人口のうち、失業者の占める割合
  • 平均時給:賃金の伸び率

Q2.アメリカ雇用統計は日本時間でいつ発表されるのか?

A2.アメリカ雇用統計は、基本的に毎月第1金曜日に発表される。具体的な発表時間は以下のとおりである:

  • <夏時間> 日本時間 21:30
  • <冬時間> 日本時間 22:30

ただし、第1金曜日が祝日などに重なる場合は、日程がずれることもある。

Q3.今回のアメリカ雇用統計の発表が外国為替市場に与える影響は?

A3.5月のアメリカ雇用統計の発表を受け、労働市場が依然として堅調であるとの見方が広がり、FRBの早期利下げ期待はやや後退した。これに伴い、アメリカ10年債利回りは4.46%前後まで上昇し、ドル買いが優勢となった。

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